思考の整理学についてもういっちょ。
思考の整理学では「見つめるナベは煮えない」という一言に集約されるような話題がそこここに登場します。それが非常に有用な話なので簡単にですがまとめを試みます。
見つめるナベは煮えないとは
もちろんこの表現はメタファーです。煮込み料理をするときにじっとナベを見つめていてもなかなか煮えないが他のことをしているといつの間にか煮えていることあるよね、というあるあるネタが元になっています。
これに該当する事例がいくつも挙げられていました。忘れてしまったものも多いですが、こんな感じ。
- あれこれ悩んでいたが、朝起きたらすっきりしていた
- ずっと考えていても解決しなかったことが、諦めて他のことをしていたら解決した
- 風呂に入っていたら面白いアイデア/画期的な解決策を思いついた
こういう経験をしたことある人も少なくないはずです。よく三上とか言いますからね。ひらめくのは馬上・枕上・厠上だという話、現代で言えば移動中、寝る前・起きた後、トイレの中。
発酵
さっき挙げた例のように偶然解決の糸口が見えるのとは異なるケースもあります。それは敢えて考えを寝かすことです。本書では「寝かせる」とか「発酵させる」と表現しています。
すごく良さそうなアイデアを思いついた場合を例として考えてみます。そのようなアイデアを思いついた直後は大抵は少し興奮していて「これは素晴らしい」などと思っています。客観的な判断ができない状態にいるわけです。そこでアイデアを書き留めて残しておくことにしました。
数日後(または数週間後)、そのアイデアを見返してみると、、、どちらかの感想になるでしょう。
- がっかりする、無価値なものに見える(風化している)
- 変わらずいいものである、またはアイデア自体が大きくなっている(風化せずに残っている)
筆者はこれを「風化する」という表現をしています。アイデアには寝かせることで風化するものと風化しないものがあるということです。
似たような話で、研究テーマについて決めるときは気になるネタをいくつかまとめておいた状態で発酵を待つと、あるときフッとテーマのほうから寄ってくるというようなエピソードが挙げられていました。
見つめていてはいけない
三上の話にも発酵の話にも共通するところは、考える対象を一旦思考の外に追いやっていることです。思考の外に追いやることで
- 全く関係ないことから着想を得る
- 細かいことを忘れ大局がわかる
など、解決の糸口が見つかったり物事の本質が見えたりするようになるわけです。
簡単にまとめると、普通の人は主観や思い込みが強くて1つの物事を見ていると正しく評価できなくなるから、一旦忘れましょう、ということで、見つめるナベは煮えないんです。